成功の法則、人のために生きること | Masahito Miyagawa | TEDxKumamoto
TEDxKumamoto で私が伝えたかったこと。それが 先義後利(せんぎこうり) という言葉でした。
自分は、これから何を大切に生きていきたいか。
 

少し恥ずかしい気持ちもありますが、ついに2019年10月あのラクビーW杯で盛り上がる10月に開催されたTEDxKumamotoでの公式動画がアップされ世界中の人が見れるようになりました。
「思ったことは実践しなければ、思わなかったことに同じ」と考え、今も変わらない気持ちをお伝えできればと思います。


「もう農業ばやめようと思うとたい・・・」この一言が始まりでした。

 
明日、収穫というミカンをイノシシに一晩にして食い荒らされたショックにおばちゃんは声を震わせていました。
こうして近年急増する野生動物の農作物被害に恐れ、なすすべなく肩を落とす農家がこんな近くにいることを、花農家の私は全く知りませんでした・・・。
 
私たち花農家は野生動物の被害を受けることはほとんどありません。
ですからもちろんイノシシ対策をしても何も得することはありません。
でも、こうして近くで本当に困っている人を見たら、誰だって何か助けてあげたい、と思いますよね。
みなさん、経験ないですか?何も得が無いと分かっているのに、いいことをすると後から得することがあるって。これを「先義後利」と言います。
今日はこの「先義後利」というアイデアを私の経験を元にお伝えします。
最初に私の三つの役割をお話たいと思います。農家の三代目としてのファーマー、そしてITを活用するサイバー、そしてイノシシに向き合うハンター。

私は大学を卒業後、アメリカはシリコンバレーにある世界一の花農家の元で2年間修業し、25歳の時生まれ故郷の戸馳島に帰ってきて花農家になりました。
毎日、生き物に向き合う仕事ならではのやりがいや面白さを感じながらも、生産者と消費者との間におおきな距離があることを不安を感じていました。そんなとき、シリコンバレーで感じた風、さらに学生時代に実習させてもらった北海道のコメ農家さんの声が蘇ってきたのです。
「農家にとってこれから一番大切な農具、それはパソコンだ。経営に使うのは今や当たり前、これからはネットを使って情報発信をしていけば、田舎なんて関係なくなるぞ」
 
私は思い切ってサイバー農家と名乗り始めました。2007年、結婚を機に二人で新しいチャレンジをしようと、ネットショップをオープンしました。
花農家の私が育てた花を、接客の仕事をしていた妻が店長となり販売を始めました。お店の名前は「森水木」。
 
これ、妻の本名なんです。花屋にぴったりと思いません?
美しい名前をそのまま残したい、そんな気持ちで森水木のラン屋さんとしました。
 
しかし、オープンして2年間全く売れませんでした。ただそれでもあきらめずに続けました。たまに入るお客様の声レビューがものすごくうれしく励みになったからです。インターネットを通じてありがとうが聞こえる、新しい時代の農業がやって来たと思いました。
 
そして、2009年私たち夫婦に待望の赤ちゃんが誕生しました。嬉しさあまって出産当日、赤ちゃんを抱くすっぴんの妻の写真をメルマガで紹介してしまいました。
 
その名も「元気誕生祭 ~私達お父さんとお母さんになりました!幸せのおすそ分けセール~」 今考えれば恥ずかしすぎますが、結果的にこの身の上話企画が拡散され、これを機にファンが激増。月商10数万円だったネットショップの売り上げが一気に数十倍になったのです。
 
「なぜ急に売り上げがのびたんだろう」と不思議な気持でしたが、うれしくてうれしく夢中で仕事に励みました。
 
今考えるとちょっとだけ理由がわかります。ECサイトでは、どうしてもきれいな言葉や画像が並びがちです。いわば無機質なイメージ。私たちは家族や喜びをそこにあらわにすることで、ECサイトに人の温度感が加わり共感されたんだと思います。
そして迎えた2012年母の日、なんと5秒間に1件という驚異的な注文が集まり、結果的に目標を5倍も上回る8日間で5000万円の売上を記録しました。

ただそうした状況の中、「足る」を知らない私はもっと売れるぞ!もっと売ろう!注文を取り続けました。その結果、出荷キャパを超え、本人たちはもちろんボロボロ、お客様にも迷惑をかけてしまいました。
ようやくクレーム対応が終わった2週間後、心身ともに極度の疲労が溜まっていたんだとおもいます。心臓が異常をきたして倒れました。幸いAEDをしていただいて一命をとりとめました。
全身麻酔から目覚めていく中、二人目の子供を宿して実家に帰っている妻のことが目に浮かび涙があふれ出しました。そしてふと自分に問い掛けていました。
私が人生で手にしたいのはお金ばかりなのか?もし今日が自分にとって最後だとしてもお金儲けをしているだろうか?いやそれは違う
 
そんなとき、先義後利という言葉に出会いました。
それは私の人生を変えた言葉といって過言ではないでしょう。
 
それは先に社会や誰かの役に立つことをしていれば、いつか自分のところに帰ってくるという先人の教えです。
でも実際には世の中のほとんどの人が考えるのは、いつか儲かったなら社会貢献できるといいな、という先利後義 です。
 
でも本当に後からできるんでしょうか。いつ終わるかわからない人生、棺桶に入る時になって「あれをしておけばよかった」「家族との時間をもっと取っていればよかった」 みなさんは、そんな後悔絶対しないと言い切れますか?
 
金儲けばかりに目がくらんだ自分が、実際に死にかけた事で、自分に何が出来るか、何が残せるかと考え始めました。
思ったことは実践しなければ「思わなかったこと」と同じ。
 
まずはじめてみたのは東日本大震災の被災者のためにはじめた毎月の復興募金。そのあと熊本地震でも続け今年6月に募金総額が1000万円を超えました。正直経営的にはそんな余裕もなかったし、きれいごとと笑う人もいたけれど、微力でも無力ではないと信じ、背伸びしながら愚直に続けてきました。
 
すると損得を超えた価値観を持つようになったはずなのに、むしろネットショップも会社の業績も良くなり続けました。そして、サイバー農家のネットショップ森水木のラン屋さんはなんと大手ECサイトの年間MVPに選ばれるまでになりました。お客様からの「ありがとう」が一番集まるお店になることができたのです。こうして私は先義後利を身をもって経験することができました。
 
私はこうして運よく全国のお客さんにITを使ってお花を届けられるようになりましたが,周りを見渡してみると農業はまさに高齢化と担い手不足が深刻化しています。
何とかできないものかと考えていた2016年2月、再び人生を大きく変えることになる衝撃的な一言に出会ったのです。
同級生の実家が経営しているミカン畑でのことでした。
「おばちゃん、今年もミカンの収穫も始まるね。甘かミカンば楽しみにしとるけん!」
ところが帰ってきた返事は、予想もしないものでした。
「もう農業ばやめようて思うとたい・・・」 
 
「収穫しようと思っとったらミカンがイノシシに全部食べられてしまったとたい、、、怖くて追い返しもできんし、また育ててもまた食べられる、もうそれならやめたほうがましばい」
言葉をなくしてしまいました。
こんなに近くでなす術なく泣いている人がいる。
自分にも何かできないか。と考えてみました。
私の自慢は友達が多いことと、ITを駆使するサイバー農家であることです。ネットを通じて仲間や応援団を増やしたり、IoT技術で野生動物との新たな付き合い方を見いだせるかもしれない。
 
「今やらねばいつできる わしがやらねば誰がやる」 いてもたってもいれなくなって2016年4月10日、
 
若手の農家仲間に呼びかけてイノシシとのこれからについて、座を組みアルコールなしで夜通し語り合いました。
そして「災害から地域を守る消防団のように獣害から地域と畑を守ろう!」そんな理念を掲げ、農家の有志で「くまもと☆農家ハンター」を結成しました。
 
☆のマークは地域の希望の☆になる!が込めれています。

イノシシ対策を始めてみて一番驚いたこと。それはイノシシの話題になるとみんな異常に盛り上がることでした。お年寄りも若者も、農業の規模も関係なく、本当は憎いはずなのにイノシシの話題になると不思議とみんなが笑顔になるんです。
 
 
さらにイノシシというマジックワード一つで農家だけでなく、産学官民が強く広くつながっています。僕らはそれをイノシシコミュニケーション(イノコミ)と名付け、イノシシピースとともに、明るく向き合う姿勢で行こうと決めました

みなさんこれ知ってますか?できますか? こうです。みんなでこのイノシシピースをしながら「イノシシ~」と声に出すんですよ。試しにみんなでやってみません?
はい、手をこうして、、、、いいですか?「イノシシぃ~」 ね、笑顔になったでしょう!
 ありがとうございました。



農家ハンターはハンターと言いながらも実は銃を使いません。山から里に下りてくるイノシシに対してはしっかり防御対策を施したうえでハコワナという檻で捕まえます。

 
 
捕まえた後、どうするか?たとえ山に運んで逃がしても農産物の味を覚えた彼らは必ずまた戻ってきてしまいます。だから僕らの手で命を止めなければなりません
どうやって命を止めるか分かりますか?(電気ショッカー動画)
 
地域と畑を守るためとは言っても私たち人間の都合で、イノシシの命を奪わなければならないことは本当につらく今でも手が震え、小さいイノシシの鳴き声が夢に出てくることがあります。
 
農家がハンターになるためにはそうした精神的なものを乗り越えつつ、農業とイノシシ対策をするという物理的な両立が必要になります。
そこでサイバー農家の知見を活かして罠とインターネットがつながるIoT技術を導入しました。そのおかげで毎日のように見回りに行く必要があったものを、発信機によって罠が作動した時のみ駆ければいいようにできました。
 
これは自動撮影されたものですが、私が猟師さんに教わっている姿
その二日後にウリ坊がたくさん集まってきて
そのあとお母さん
さらにはママ友まで、、、 
こうして普段、目にすることのないイノシシの生態も、自動撮影カメラや動画によっていつ頃、どんな行動しているかまではっきり見えるようになったのです。
 
さらに今ではIT企業と共同でAI を使ってイノシシだけを判別する世界初の仕組みを開発し、
ホームページやSNSで公開して野生動物とは縁遠い人たちへと啓発をしています。
 
花農家の自分にはまったくメリットのないイノシシ対策でしたが、ただ、ひたすら先義後利の「先義」でボランティア活動を3年半続けていたら、たくさんの利が舞い込んできました。
 
そしてさらに県内各地の若手農家100人が、農家ハンターの活動に賛同してくれました。
 
今では年間数百頭ものイノシシを捕まえることができるようになり、私たちの地域では農作物被害も抑えられるようになってきました。
しかし、捕まえれば捕まえるほどまた新たな課題が出てきました。捕まえたイノシシをどうするか。
 
専用の加工場がなければ、ジビエとして流通させることが出来ずに穴を掘って埋設するしかできないのです。今、日本でジビエとして利用されるのは捕獲されたイノシシのほんの数パーセント。そこでもっと利活用できるようにイノシシ年の今年、大きな挑戦をすることを決めました。
今まで散々「儲からないことばかりそんな一生懸命やってどうするの?」笑われてきましたが、私は先義後利の法則を知っています。4千万円の借金を背負って作った「農家ハンタージビエファーム」が今月末に完成します。
 
 
そう、これからが後利なんです。
ジビエファームが出来たら私たちはジビエだけではなく、オーガニックペットフードを作ったり、皮をなめしてこんな風に(Apple watchのイノシシバンド)今までなかった活用をしていきます。
さらに有機肥料として生まれ変わらせて畑に戻すという、農家だからできる世界初のサステナブルモデルが出来つつあります。
 
こうしてこれまで厄介者だったイノシシが今では「自然の恵みばい」と笑い合えるようになってきました。
ただ農家ハンター活動の本当の肝、それは農産物を食べ荒らしてしまうイノシシを退治する事ではありません。地域の担い手作りに繋がるんです。
 
農家ハンターの活動を通じて 「あんたたちのお陰でまたみかん作れるようになったとよ」「あそこの子はドラ息子て思いよったばってん、イノシシば退治してくれたとよ。ほんなこてよか子ね」
 
人から必要とされ、ありがとうと言われる経験で自信がつき、みんなの目の色が変わってきています。
こうしてこれまで元気が有り余っていた若手農家が地域のリーダーへと育っていくのです。
 
先義後利のこの利は地域にとっても、農業にとっても、とても大きな利になっています。

最後に、私たちはこれからも先義として野生動物から地域と畑を守る活動をこからも続けていきます。
そのプロセスで若手農家たちがIoTを駆使しながらイノシシ対策に立ち上がり、地域のリーダーになっていく農家ハンターモデルを全国に広げ、活用してもらえるようにしていきます。
さらに世界中の人に伝わるよう、国連の舞台で発表できることを目指しています。
 
そうしたきっかけで、若手農家が世界へ飛び出し、
 
多くの国の農家たちを助けていきます。世界中で野生動物による農作物被害が減り、安定して農業を営むことが出来るようになるでしょう。

これが実現できた時の後利は、いったいどんなものか想像できますか?
国と国との関係を越え、きっと私たちの子供の時代に返ってくると信じています。
 
微力でも無力じゃない何もしなければ無力のままですが、仲間を作り、一緒に一歩踏み出すことで、世の中にたくさんある問題を解決する力になるかもしれません。
 
今回のテーマはWe are・・・
 
私の We で語れる仲間を紹介します。
たっちゃん、井上君 作本君、 西川君、 宮崎君、後藤さん、木村さん、
これが 地域と畑は自分たちで守る 農家ハンター です。ありがとうございました。

 
 
今年もこのTEDxKumamoto が8月1日、熊本市で開催されることが発表されました!
感謝を込めて参加者には九州ジビエを振る舞いたいと思っておりますのでお楽しみに!
 
 
 
「九州ジビエ」を冠するプロジェクトもいよいよラストスパート、応援いただけるとうれしかです! https://www.makuake.com/project/farmer-hunter/

地域と畑は自分たちで守る!


くまもと☆農家ハンターです!

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